第31回リアルトップセールスインタビュー

武田さん
第31回のリアルトップセールスインタビューは某生産財メーカーにお勤めの武田さんです。

武田さんの経歴は極めて異色であり、最初は某大手メーカーにてSE、そしてベンチャー企業の創業メンバーとなり商品開発を担当、そして現在は某生産財メーカーの営業として現在は実績を上げている方です。

営業としての実績は、次々と大手企業の新規開拓を行い、将来的に合計で年間10億円以上は見込めるビッグユーザを獲得したことになります。

しかもこれまでずっと営業成績が良かったわけではなく、ここ数年で凄まじいほどの変貌を遂げてこの実績をたたき出しているというのです!

今回は、そんな急激な変貌を遂げた武田さんに営業の手法とその変われたきっかけをお伺いしました。

■売るための秘訣
武田さんは営業で実績を上げるために、営業の鉄板ロジックの10か条というものを持っています。
(営業の鉄板ロジックとは営業活動における行動指針のようなもの)

「取引先の社長や役員、事業部長と会えること」
「レベルの高い顧客と仕事をすること」
「製品の優位性では採用決定要因にならないこと」
「売れる製品が良いのではなく、売った製品が良いということ」
・・・・

など、営業における行動指針を明確にしているのです。

その内のひとつで私が何気なく目に留まったものについて深く質問をしてみたのです。

その鉄板ロジックとは、

「レスポンスを早めること」

■レスポンスが及ぼす影響力
武田さんは顧客の問合せ、質問などのレスポンスを早めれば早めるほど見積りを出す機会が多くなるといいます。

そして営業において見積もり提示までできているということは、受注獲得に近づくことなり、業績を上げる上で非常に重要な要素になると話していたのです。

人は質問に対してすぐに回答を欲しがるものです。
ひとまず出す回答が相手にとって精度の良いものでなくても構わないと武田さんは言います。

仮説レベルでも構わないのでまず先に回答をしてしまう。そこで間違っているようなら当然相手から修正依頼や宿題がきます。

そしてその修正依頼や宿題にもレスポンス良く返していくことで相手とのコンタクト回数が増えていきます。

このコンタクト回数(訪問・電話・メールなど)が増えれば増えるほど、商談を簡単に中断するということができなくなるというのです。

なぜお客さんも商談を中断することができないかというと、商談のひとつひとつにはお客さんも時間と労力というコストを掛けています。
そのコストが大きくなればなるほど、現在進めている商談をやめるという行為はこれまでに蓄積してきた行動を否定することになり、その心理が強く働くからです。

例えば、パソコンを買おうとしてスペックのことや使いやすさのことを色々と比較検討し、やっとの思いでこのパソコンがいちばん自分に合っていると結論付けた後に、そもそもパソコンを購入しなくても「IPADで、じゅうぶん事足りるのではないですか」といわれてもその提案は受け入れられないという思いが発生します。

これとまったく同じです。

新たな提案の方が良かったとしても、人はこれまで苦労して積上げた行動を否定するということはなかなかできないものなのです。

このような購買心理をうまく活用した営業手法がこの「レスポンスを早めること」に組み込まれているのです。

■この手法を掴んだきっかけ
現在はレスポンスを早めることや他の「営業の鉄板ロジック10か条」を駆使して、凄まじい実績を上げている武田さんですが、実は数年前までは目標を達成することもおぼつかない営業だったといいます。

営業を頑張っているものの実績の波が激しく、思うように予算を達成することができなかったのです。

しかし、悶々としていたある日、ある人の一言でこれまでの営業人生をがらっと変えることができたのです。

そのある人とは、ビジネススクールのキャリアカウンセラの方です。
その相談時間の中で、自分自身のこれまでの経験値を振返るというアドバイスをもらったのです。そのアドバイスとは
「君はこれまでの自分を振り返れていない、積上げてきたものを毎回1からやるつもりか」
という言葉を投げかけられたのです。

その言葉から自分自身の掘り下げが甘いことを痛感し、死ぬほど考え抜いたそうなのです。
「いったいこれまで蓄積した経験は何なのか」を。

なぜ?なぜ?なぜ?を繰り返し、ようやくたどり着いたものが営業の鉄板ロジック10か条であり、この10か条こそ自分がこれまで蓄積してきた営業ノウハウであるこということが明確になったのです。
断片的な経験値を振返ることで体系的につなげていき、ビジネスフレームワークとともに落とし込むことで、今までにないくらい思考が深くなったわけです。

自分自身が過去の成功体験で積上げた営業ノウハウが明確になれば、後はこの行動指針に沿って動くだけです。

そして作り上げた行動指針を常に実践することで業績を飛躍的に伸ばすことができたというのです。

営業というのは、今日や明日、今月、今期といった未来の数字を追う職種であり、常に前を見て活動をしています。

そのような営業という職種の人間は自分を振り返るという機会が少なく、なぜ自分が売れているのかが分からないままになっている営業マンが山ほどいます。

しかし、なぜ自分自身が売れているのかを体系化できなければ、スランプに陥った時に元に戻すことが難しくなりますし、スランプに陥らなかったとしても、マネージャーとなり部下を育成する時にうまく育成ができず苦労をします。

定期的になぜ今自分がうまく行っているのか、これまでの自分自身に培った営業ノウハウはいったい何なのかをあらためて週末にでも考えることで、自分自身を成長させるきっかけになるのではないでしょうか。

■水田チェック
武田さんの営業手法はまさに「サンクコスト効果」です。

「サンクコスト効果」とは、これまで行ってきた投資をふいにしたくないという思いから、方向転換ができない効果です。

例えば、いつも通勤に使っている原付が故障したとします。その原因がバッテリーだったとします。そのバッテリーと修理代に10,000円の費用がかかりあなたは取替えました。

その数ヶ月後、ブレーキがおかしくなりまた更に10,000円を支払ったとします。

そして更にタイヤが磨り減ってきたため両方のタイヤを交換し15,000円かかりました。

そしてその数ヵ月後に今度はエンジンが故障してしまったのです。
そのエンジンの修理に50,000円かかってしまった時にこの修理代にあともう少し金額を足せば新たな中古の原付を買えたとしても、これまでの投資が無駄になることを嫌がり、新たな原付を購入しようとは思わないのです。

これがサンクコスト効果です。

武田さんが行ったレスポンスを早めることは、コンタクト回数を早めることにより、顧客がこちらとのやり取りを増やす結果になり、そのやり取りを蓄積させることでサンクコスト効果が発生しているのではないかと分析しています。