第53回リアルトップセールスインタビュー
第53回のリアルトップセールスインタビューは(株)フランソアの太田さんです。
太田さんが勤務しているフランソアは九州地区では有名なパンメーカーの企業です。
パンメーカーと言えば、ヤマザキ製パン、フジパン、敷島製パンなどがありますが、そういった企業との競争環境の中で、高品質を売りに九州地区で営業を展開している企業です。
今回ご紹介する太田さんは、増税で市場環境が厳しい中、「売上達成率」「既存店年比」「粗利達成率」の3つの部門で目標を達成しています。
この3冠を達成したのは約40名いる営業の中で太田さんを含めたった『2名』のみ!
また、当社の経営幹部の話から、太田さんは売上の増減が少なく業績が安定しているとのこと。
では、なぜ売上が安定しているのか、そして高い粗利額を獲得するために何をしているのでしょうか?
その点を解明すべく太田さんより話を聞いてまいりました。
■パンメーカーのトップセールスが行う習慣とは
パンメーカーの営業先は「スーパー」「コンビニ」などの小売店です。
小売店のバイヤーに店舗のパンの販売状況を確認し、状況に応じて新商品の企画を提案したり、定番の入替などの提案をしたりしています。
営業活動のほとんどは、このように担当店舗を巡回しての提案活動を行っていますが、太田さんは店舗を巡回する際に、必ずある行動を徹底するようにしているのです。
その行動とは、バイヤーや担当者に状況を確認しにいく前に、必ずパン売り場の確認を徹底しているということです。
この行動は入社当時に上司であった川崎部長の教えであり、売り場を定点観測することで売り場の変化に気づき、売り場の変化が顧客を知るという点で非常に重要な行為になるからなのです。
その売り場の中でも特に注視する場所は「定番」の棚です。
なぜ定番の棚を注視するのかというと、「定番の棚」にはバイヤーや担当者の考えが色濃く出るからだというのです。
特売品というのは顧客を引き寄せるためにその時その時のお買い得品を投入しますが、定番品はそこまで頻度高く入れ替えるものではありません。
つまり、バイヤーや担当者の考えの変化が見えやすい場所なのです。
商品の入替があれば、バイヤーや担当者が売り場に不足感を感じていた可能性は高く、その変化をいち早くチェックするためにも売り場のチェックは欠かせないというのです。
■常識vs 非常識
売り場を定点観測していると、他社が注力している商品も見えてきます。
そして、注力している商品が実際に売れているかどうかの確認を行い、売れていないという情報をつかむ事ができれば提案のチャンスです。
提案のチャンスが訪れると、すぐさま、今、自社で売れている商品の話題を展開してシェア獲得の動きに移ります。
まずはお試しといった感じで小さく入り、そこから売れ行きをバイヤーや担当者と確認していく作業に入ります。
太田さん「先日、入れ替えた商品の売れ行きはどうですか?」
バイヤー「なかなかいい調子だよ。提案してもらって良かったよ」
しかし、入れ替えた商品がいつもうまくいく訳ではありません。
他店で売れている商品を投入しても、売れないことも当たり前のようにあります。
こういった状況が発生した場合に、違う商品を提案して挽回を図ろうとするのだろうと私は思っていたのですが、太田さんからは意外な回答が返ってきました。
水田「切り替えた商品が売れない場合は、違う商品を提案するのですか?」
太田さん「もし、提案した商品が一度売れなくても、自分が「売りたい」、「売れる」と思う商品であれば、商品特徴が伝わるPOPをおいて目立つようにします」
水田「もし、それでも売れなければどうしますか?」
太田さん「それでも売れなければ、棚の底を浮かせてパンが目立つように陳列するようにします」
水田「それでも売れなければ?」
太田さん「レイアウトを変更します」
水田「それでもだめなら?」
太田さん「什器の場所を変えたりします」
水田「それでもダメなら?」
太田さん「商品を日持ちするものに変えて廃棄ロスを抑えます」
水田「それでもうまくいかなければどうしますか?」
太田さん「パンのフェイスを減らして、違う商品を置いてもらうようにします」
水田「パンのフェイスを減らす行為は自分の売上を下げる結果になると思いますが、それでもそのような提案を行うのですか?」
太田さん「はい、そうですね」
正直、意外でした。
商品の入替を提案するのかと思ったら、その提案はかなり後。
まずは商品の見せ方を変えるということころに焦点が当たっています。
しかも最終的には顧客の利益を考えて、パンのフェイスを減らすという提案まで行うのです。
そして一番驚いたことは、私のこのような面倒な質問攻めに対して、全て即答してきたところです。たまにこのような対応をしているのではなく、常に実践していることが窺えました。
しかし、このような営業方法は営業の定石からいうとあまり選択されない方法です。
POPやレイアウト変更あたりまでは行うかもしれませんが、それでも売れなければ、売れない理由は店舗の立地や集客に原因がある可能性が高いと考え、諦めて他の店舗に力を注ぐのではないでしょうか?
ある程度のところで顧客を見極めて、「販売力のある小売店に注力する」
それが営業の定石のような気がしていたのですが、太田さんの行動はこの効率的な営業の真逆をついているような気がしました。
そこでふと思ったのが、やはり他社の営業がやっていないことをやるからこそ、他とは違うと感じてもらうことができるということ。
そして、売り場のことを誰よりも考えてくれるので、定番といった店舗にとって重要な売り場を任せてもらえるのではないかと思ったのです。
営業の非常識=誰もやっていないこと
太田さんの営業活動を聞いて改めて「抜きんでた営業とは何なのか」を学んだような気がしました。
■水田チェック
昔、広告と言えばDMやチラシといった紙媒体が多く使われてきました。
そしてインターネットが普及している現在ではオンラインの広告が中心となってきています。
時代の流れによって広告のあり方は変わってきますが、オンラインがあたり前の時代だからこそ、あえて紙媒体での広告は目を惹くものになったりします。
営業活動でも質を高める時代に、量で勝負してみる。
効率が求められる時代だからこそ、非効率で勝負してみる。
あえて今の時代の逆をついてみると、それだけでその他大勢ではなく、唯一の存在になってくるのではないでしょうか?
人と違うことをするというのは恐怖感や不安感をもたらします。
「そんなやり方は間違っている」
「誰もそんな営業方法はしていない」
その他大勢と同じことをしていないと、さも間違っているという風潮が日本にはあるかもしれませんが、よく考えるとその他大勢と同じことをやれば、ただの普通の人です。
他社の営業とは違うと思われるためには、
「あえて他の営業担当者とは逆のことをやってみる」
「あえて普通の営業ではやらないことをやってみる」
という考えも必要なのではないでしょうか。
あるマーケティングの権威が
「どのような道を選んだにせよ、手本となる成功例が見当たらなければ、周囲の人々がしていることを眺め、単にその逆の事をすればいい。なぜなら、常に大多数の人間は間違っているからだ」
というナイチンゲールの言葉を引用して、周りに否定されるマーケティングプランこそ成功する可能性が高いと言いましたが、今回はまさにこのような考えに気づかせてもらったような気がしています。
■インタビュー企業
社名:株式会社フランソア
住所:福岡県糟屋郡新宮町緑ケ浜3丁目1番1号
TEL:092-941-2323
URL:http://www.francois.co.jp/
2015年07月09日トップセールスインタビュー