トップセールスインタビュー

第56回リアルトップセールスインタビュー

高井社長

第56回のリアルトップセールスインタビューは(株)ヒトカラメディアの高井さんです。

(株)ヒトカラメディアはオフィスの移転コンサルを行っています。

その内容は物件仲介だけに留まらず、依頼主のありたい働き方からオフィスレイアウトや設備に至る総合的なオフィス空間を提案する企業です。

今回インタビューさせていただいた高井さんは当社を2年前に設立し、現在は10名以上の従業員を抱える企業に発展させているベンチャー企業の経営者です。

今期で3期目になる当社ですが、2年目の実績の作り方に非常に興味深いものがありました。

創業まもない企業ですと、顧客が少ないので新規顧客の開拓に必死になるのは当たり前だと思います。

まずは生計を安定させるために顧客獲得が必須です。

しかし、高井さんに「どのように顧客数を伸ばしてきたのか」とお伺いすると、非常に意外な一言を耳にしたのです。

高井氏「私は新規活動をそんなに積極的にはやっていません。ほとんどが紹介です。売上を見ても、およそ7割ぐらいが紹介での売上です」

金額にして7000万

当社の業界では1人あたり1500~2000万円の売上が平均と言われる中3倍以上の売上を紹介だけでたたき出しているのです。

だとすると企業で提供しているサービスが非常に特殊で他社にはないものだからなのかとも思ったのですが、その質問に高井さんの答えは「NO」でした。

同じサービスを提供できる企業はいくらでもあるとのこと。

では、いったいどのような方法を使って紹介だけで顧客を増やしているのでしょうか?

その謎をインタビューしてきました。

■大量の顧客接点を確保する発想
高井さんは新規開拓を、飛び込みやテレアポからは行いません。

とはいえ全く新規活動を行わずに、ただ問い合わせを待っているだけかというとそうではありません。

どのような新規活動を行っているかというと顧客一人ひとりに接点を取るのではなく「顧客が集まりそうな場所」に出向いているのです。

要は、セミナーやイベント、勉強会などです。

高井さんは社長という役職でもあるため新規開拓だけに時間を使うことはできません。

経営全般の業務をこなさなければならないのです。

経営全般の業務をこなす中、短時間で顧客との接点をとれる方法として、この「顧客が集まりそうな場所に行く」というのは非常に効率的な方法です。

しかも手当たり次第のセミナー、イベントや勉強会に参加している訳ではありません。

「自分たちの力をもっとも必要とする顧客」が集まりやすい場を選別して参加しているのです。

自分たちの力をもっとも必要する顧客とは以下の3つの視点で選別しています。

「強み」「弱み」「機会」です。

【強みとのマッチング】
当社は物件の仲介に留まらず、オフィスレイアウトやオフィス設備を提案する点に強みを持っています。

しかし、オフィスの空間に対して特にこだわりを持たない企業であると、この強みを活かすこともできません。

そこでまず選別の基準となるのが「オフィス空間と生産性の関係を理解している企業」になります。

その生産性を理解している企業として「IT企業」をターゲットとして設定しています。

【弱みを強みに転化】
当社は創業間もない企業です。信用という面では創業年数が若いということから商談が不利に運ぶケースもあると思います。

しかし、創業間もないことを弱みとして卑下するのではなく、その弱みを魅力的に感じてくれる企業はどこかという視点で考えています。

そこで出た仮説が「スタートアップ企業」なのです。

「類は友を呼ぶ」ということわざがありますが、人は共通項があると急に近しい関係に思えるという心理があります。

その心理から創業間もないスタートアップ企業であれば、置かれた環境が似ていることがうまく働き、逆に興味を持ってもらえる可能性が高くなるという考えなのです。

【機会の可能性】
最後は機会です。

いくら強みと合致していても弱みが補完できたとしても需要自体が発生しない企業であれば意味がありません。

そこで当然ですが「オフィス移転が発生する可能性がある」という視点でターゲッティングを行っています

「オフィス移転が発生する可能性がある」=「成長中もしくは成長意欲のある企業」

この視点はまさに外すことができない要素だと思います。

■紹介を誘発するプレゼンテーション
秀逸なターゲット設定ではありますが、目を引くのはこのターゲット設定だけではありません。

それよりも、そのセミナーや勉強会に行った際に高井さんが実践していることなのです。

高井さんは初めてお会いする相手に自己紹介をする上で、あることをいつも伝えるようにしています。

その伝える内容とはこの3つです。

① 会社のミッション
② 現在お付き合いしている企業
③ 紹介がほとんどであること

① 会社のミッション
まずは自社がどのようなこだわりを持って事業を営んでいるかということを話します。

会社移転をコストと考えるのではなく投資と考え、オフィス空間を最適なものにすることで人材をより活き活きとさせることをミッションにしていることを伝えるのです。

この『こだわり』を強く話すことによって、聞く側に魅力を感じさせます。

強いこだわりや意見には「権威」という心理効果が働きます。

「権威」とは、権力のある人に従わなければならないと自動的に考えてしまう心理です。

我々は子供のころから「親の言うことを聞く」「先生の言うことを聞く」と教育されています。

その経験から適切な権威に従うことが正しいことであり、従わないことは間違いであると認識するようになっているのです。

この「権威」の力は強いこだわりや強い意見にも同等の効果が見られます。

なぜ、小泉首相があんなにも支持率が高かったのかというと、官僚が用意したメモを読むのではなく、自分の信念を語っていたからなのです。

今回の高井さんの会社のミッション(=こだわり)を初対面の方に伝えることで、そのこだわりが「権威」の心理を誘発し、その心理が安心感にもつながっているものだと思われます。

② 現在お付き合いしている企業
現在、お付き合いしている企業が、IT系の企業が多いこと、スタートアップ企業の方が好まれること、成長意欲のある企業であることを伝えます。

ここで付き合っている企業の属性を、こと細かく分類しているところが非常にうまいところです。

紹介者が顧客を紹介する時に最も心配になるのは、無駄な紹介になってしまった時です。

紹介はしてみたものの、お互いの求めているモノが違っていて結局時間の無駄になってしまうことを紹介者は恐れています。

しかし、高井さんのように現在お付き合いしている企業をしっかり分類して伝えることは紹介者にとってどんな人を紹介すれば良いのかが明確に分かるため、該当者を検索しやすくなります。

そして具体的に紹介者をイメージしやすくなるので、実際の紹介につながる可能性が高くなるのです。

③ 紹介がほとんどであること
これは事実を伝えているだけなのですが、「紹介がほとんどです」と言われると暗に「質の高いサービス」を提供していることを想像してしまいます。

また、紹介されるという事実が高井さんを他の人も評価しているという「社会的証明」の原理をも誘発させています。

※社会的証明・・・多くの人が支持しているものを良いものと判断してしまう心理効果
(例:ベストセラー小説=おもしろい小説、行列のできるラーメン店=うまい店 など)

このような事実を聞いてしまうと、実際に当社からサービスを受けたことがない人であったとしても社会的証明の原理によって紹介しやすくなります。

この3要素を自己紹介の中に毎回盛り込むことで、紹介を誘発させているのです。

単に偶然ではなく、紹介を誘発するような営業を行っているという点に感心いたしました。

これをお読みいただいたあなたも、紹介を得るための具体的方法をゲットすることができたのではないでしょうか?

早速、今日から使ってみましょう!

■水田チェック
高井さんの営業力の源泉にはポジショニングをうまく設定しているという背景があると思います。

サービスについてはどこでもできたとしても、そのサービスを提供している先として「IT業界」「スタートアップ企業」「成長意欲のある企業」とカテゴライズしたことは大きいと思います。

小企業が大企業に勝つ戦略は、ランチェスターの戦略にもあるように「局地戦」です。

市場を細分化し、細分化した市場に経営資源を特化することで大企業に打ち勝つことができます。

例えば、家電でも個人事業主が「家電」というカテゴリーのままでは大手家電量販店に負けてしまいます。

しかし、家電の中でもパソコンだけ、そしてパソコンの中でもMACのみに特化している店、となると顧客の店に対する見方が変わってきます。

カテゴリーを特化すればするほど、大手には提供できないサービスがあるのではないかと魅力を感じるものなのです。

そして対象顧客をカテゴライズすることで、どのような企業を紹介すれば良いのかも明確になります。

ご紹介を促す時に、ついつい多くの紹介をもらいたいと思い、「どんな方でも!」と言ってしまいがちです。

しかし、改めて「どんな人であれば自分の商品・サービスを喜んでもらいやすいのか」を考える。

紹介してほしい人を具体的にすればするほど、あなたの商品・サービスの魅力は上がり、また紹介の可能性も高くなることは間違いないと思います。

■インタビュー企業
社名:株式会社ヒトカラメディア
住所:東京都渋谷区神南1-9-2 大畠ビル6F
TEL:03-6455-1940
URL:http://hitokara.co.jp/

第55回リアルトップセールスインタビュー

高江さん

第55回のリアルトップセールスインタビューは(有)竹工房オンセの高江さんです。

今回のトップセールスは訪問販売ではなく、店頭販売のトップセールスです。

高江さんは大手百貨店の物産展などに期間限定で出店し、竹を使ったバッグや箸、カゴを販売しています。

普段は、大分で商品の制作を行っているのですが、毎年、春・夏の時期になると全国の大手百貨店に期間限定で出店し、年間の売上の70~80%をこの店頭販売で稼いでいるのです。

そしてその販売力は初出店の頃から他店を圧倒しています。

初めて百貨店に出店した当初、ある事情で急な出店となったこともあり、百貨店チラシでの出店の告知が間に合わないまま販売をスタートさせました。

しかし、チラシに掲載された店舗が1週間で50~60万の売上がやっとの中、初出店で120万の売上を獲得

そして翌年の販売では、他店同様に広告掲載をしてもらうと、なんと週間売上は230万!

当然ですが、出店まもない店ということもあり立地は他店より悪条件だったと思います。

にも関わらず他店の4倍もの売上を獲得したのです。

そして直近では週間の売上を300万にまで引き延ばしています。

通常、同業の他店(竹工芸の店)が週間100万越えは厳しい中、その金額をはるかに超える実績をたたき出しているのです。

それでは、どんな悪条件の中でも他店を圧倒する販売術とはどんなものなのかをご紹介いたします。

 

■考え抜かれたセールスプロセス(新規編)
よく営業マンに商談の進め方について聞くと、

「そんなものありませんよ。感覚、感覚!」

と言われることが少なくありません。

今回、どのような手順で営業を仕掛けているのかをお尋ねした時に、正直、そのような返答がくると予想していたのですが、高江さんの営業方法は明確なセールスプロセスがありました。

それを、順を追って解説いたします。

1)声掛けのタイミング
まずは声掛けのタイミングです。

店頭販売にとって声掛けのタイミングというのは非常に重要なポイントです。

店舗内でお客様に話しかけることができ、その時間が長くなればなる程購入される可能性は高くなります。

それは消費者の立場で考えると分かると思います。

しかし、だからといって店舗内に入る客、入る客、すべての人に話しかけてくるような店であれば、非常に近寄りづらく、店舗内に人がいなくなってしまう事も容易に想像がつきます。

冷やかし客には距離を取りつつも、本気で考えている顧客には漏れなくフォローする販売活動が求められるのです。

では、冷やかし客なのか、本気客なのかを高江さんはどこで判断しているのでしょか?

それを高江さんにお聞きするとこんな答えが返ってきました。

水田「声掛けのタイミングって難しいと思うのですが、高江さんはどこで見極めていますか?」

高江氏「私はお客さんの足の向きをチェックしています。お客さんの足が商品の方をしっかりと向いていれば話しかけるようにしています」

水田「へ~、なるほど足の向きですか」

高江氏「そうです。買わないお客さんは足が出ていく方向を向いています。これは私の経験則ですが、たいてい話しかけると逃げていかれます」

水田「なるほど、よく数秒立ち止まったら声をかけるという話は聞きますが、足の向きで判断するのですか。確かに冷やかしでも数秒商品を眺めていることはあるので、立ち止まった時間よりも体の向き、特に足を見るというのはおもしろいですね」

2)体験による理解
水田「それでは、足の向きが商品に向いているお客さんにまずは何を話しかけますか?」

高江氏「まずは何かを話しかけるというよりは、実際に竹細工のバッグを持ってもらうようにしています」

高江氏「私の顧客層の方は比較的年齢層が高く、普段バッグが重いことに少なからず不満を持っています。そこでこの竹バッグを持ってもらうとその軽さに驚きます。あと、竹細工だと洋服に引っかかったりするのではないかという心配がありますので、実際に体感していただくことで、その不安を解消していくのです」

水田「説明よりも体験させるということですね」

この説明よりも体験させるというのは非常に理にかなった営業方法です。

これは「巻き込み」という心理トリガーをうまく利用しています。

「巻き込み」とは体験させることによって、顧客は義理を感じ、もう潜在意識の中では買うつもりになっているという心理です。

車の試乗や服屋の試着などがまさにこの心理であり、余計なことを説明するよりもまずは体験させることは有効な手段です。

3)本物の証拠の提示
水田「体験させた後は何かを説明するのですか?」

高江氏「その後は、輸入品との差別化を図ります。国産であれば作家の名前が入ることや、伝統工芸品として認定されている場合にしか入らないマークの説明を行います」

体験させた後は、品質が確かなものである教育。

国産であることの見分け方や、経済産業省認定の伝統工芸品であることを認識してもらうことで本物であることの証拠を提示しています。

素人であれば、今、目の前にしている商品が本当に確かなものであるかどうかは判断しづらいものです。

なので、多くの人はブランド品を好みます。

ブランドがあれば確かな商品であると思えるからです。

それと同じように「●●お墨付き」のような証拠を提示されると「本当に確かなものであるのかどうか」という不信感は一瞬のうちに払しょくされます。

顧客心理を先回りして考えられた効果的なセールス方法です。

4)保証によるリスクリバーサル
水田「更にその後もまだ何かありますか?」

高江氏「そうですね。最後は商品を購入いただいた際には5年保証がついていることを伝えます。うちの商品は購入いただいて5年間は、壊れた場合に無償で修理しますし、5年以降も実費で修理することを伝えています」

水田「(おーーー、クロージングまであるとは!完璧すぎる~)※心の声」

この話の流れがあっさりと出てきたところから推察すると、それぞれの営業方法を場当たり的にやっているのではなく、明らかに一連の型として構築されており、普段から実践されているということが分かりました。

「声掛け」→「体験による理解」→「本物の証拠の提示」→「保証」

世の中にいる営業パーソンの中で、いったいどれぐらいの人が自分の商談の型を持っているでしょうか?

おそらく多くの営業パーソンのほとんどが、型を持たずに営業活動していると思います。

やはりトップセールスマンは、話の流れや型にまでこだわっていることが、このインタビューを通して痛切に感じます。

 

■リピートさせる営業法
また、新規顧客への営業方法だけではありません。

高江さんはリピート顧客に対しても「ある行動」を実践するように心がけています。

その「ある行動」とは、店舗に再来店してくれたリピーターに必ず名前を呼んで挨拶をするようにしているのです。

顧客というのは一度購入したお店で以前買ったことを覚えてもらっていると嬉しいものです。

一見客ではないという扱いを受けると自己重要感を刺激されます。

そして、うれしく思ったリピーターが更に高江さんやお店のファンになるのです。

しかし、全国にいる何百、何千人といる顧客の顔を覚えることは至難の業です。

というか不可能です。

顔と名前を憶えておかなければ、来店した際に名前を呼ぶことはできないのですが、それを実現するために高江さんはあることを実践しています。

その実践している事とは、商品を購入してもらった際に、購入した商品とお客さんの写真を必ず撮ってファイリングしているのです。

そして写真が蓄積されたファイルを出張前に確認し、出店地に向かうのです。

この弛まない努力が、リピーターの心を鷲掴みにしているのです。

 

■水田チェック
今回、インタビューをさせていただきました高江さんは、かなり年下である私がネホリハホリ聞く質問に対して、何一つ嫌な顔をせずに、笑顔で多くのことを語ってくれました。

この人柄の良さは普段の販売にも出ているようで、20万円もする高額のバッグを買うお客さんに対して、「本当に買うんですか?」と聞き直すほどの方です。

そんな人柄の良さからなのか、いつも向けられている視線の先は「お客様の声」です。

先程、ご紹介したセールスプロセスもお客様の声が元で作られています。

「普段使っているバッグが重いこと」「竹細工のバッグに洋服が引っかからないかと心配していること」「すぐに壊れるのではないかと心配していること」などは全て実際のお客さんから学んでいます。

そして今もインターネットで販売した顧客に対しては、必ず商品を送付する際にお客様アンケートを同封しています。

そして、そのアンケートが返送しやすいように返信用封筒も用意するほど「お客様の声」を大事にしています。

世間一般では、売れない悩みを上司に相談したり、書籍を買ったり、セミナーに参加して解消しようとする方が多いと思いますが、意外にも最も効果的な方法は別にあるかもしれません。

『お客様の声』

これを収集する活動を始めるだけで、誰よりも売れるトップセールスになれるのかもしれません。

 

■インタビュー企業
社名:有限会社竹工房オンセ
住所:大分県宇佐市安心院町萱籠1167
TEL:0978-48-2027
URL:http://www.take-once.com/

第54回リアルトップセールスインタビュー

鈴村さん

 

第54回のリアルトップセールスインタビューは(株)長登屋の鈴村さんです。

鈴村さんお勤めの長登屋はおみやげの商品企画・製造販売を行っている企業です。

長登屋の歴史はかなり古く、創業80年という老舗企業です。

今回のインタビューした鈴村さんは当社の営業マンの中でも群を抜いて素晴らしい数字を築いてきた人物であり、なんと目標達成率については120%以上を8年連続、継続しています。

この達成率の高さを継続している秘訣は、毎年出し続けているヒット商品の存在です。

そのヒット商品のいくつかをご紹介しますと

●「焼肉たむら」とのコラボ商品(30万個、1億円以上の売上):2011年
●「せんとくん」のクッキー(1億円以上の売上):2012年
●大阪の恋人(30万個、1億円以上の売上):2013年
●USJへの商品導入(3億円以上の売上):2014年

毎年1億円以上のヒット商品を生み出し、当社に多大なる貢献をしているのです!

しかし、毎年ヒット商品というのがそんなに簡単に出せるものなのでしょうか。

天才的な商品企画の才能があるからなのでしょうか?

そんな疑問を感じながら話を聞いてみましたが、ヒット商品を生み出す秘訣は天才的なセンスではなく、意外なものでした。

商品企画のセンスが人よりもズバ抜けているということではなく、非常に再現性の高い活動を行っていたのです。

それでは、その内容をご紹介したいと思います。

 

■おみやげ業界の特性
おみやげメーカーの営業先というのは、観光地のおみやげ屋さんやホテル、空港の売店、サービスエリアなどにある売店が主になります。

売上アップには提案した商品が「売れたか」「売れなかったか」は大きな要素であり、ヒット商品を開発できれば顧客の信頼を獲得することができ、その結果として店内シェアの拡大にもつながってきます。

しかし、ヒット商品を生み出すというのはどんなに知識があっても、どんなに業界に長けていたとしても、どんなに消費者トレンドを掴んでいたとしても非常に難しいものです。

この雲をつかむようなヒット商品を作るために、鈴村さんはいったい何をしているのでしょうか?

 

■ヒット商品の情報ネタはどこにあるのか?
ヒット商品を開発するにあたっていちばん私が知りたいと思ったのは、その情報のつかみ方です。

今のトレンド情報をどのようにつかみ、どのように商品化するのか。

その点について尋ねてみると、このような話が出てきました。

水田「ヒット商品を開発していくには、今のトレンドを把握してそれをいかに商品化するかだと思いますが、鈴村さんはどこからその情報を得ているのですか?」

鈴村氏「これまでの経験からヒット商品というのは、こちらがこだわって作った商品ほど売れません。こちらが一方的にトレンドを読んで開発しても売れないことが多いんです」

水田「なるほど、プロダクトアウトだとうまくいかないのですね」

鈴村氏「そうです。こちらがこだわった商品よりも顧客の意見を反映させた方がヒット商品につながる可能性が大きいですね」

水田「そうですか。となると売り場の方に今の消費者動向をお伺いしながら商品を企画していくのですか?」

鈴村氏「いえ、売り場の方ではなく、本部の商品企画のリーダーや会社によっては社長や取締役クラスの方に聞くことが多いです」

水田「売り場じゃないんですか?」

鈴村氏「はい、売り場の方ではなく本部のリーダーや役員たちと話をした方が、こちらを下に見ているということもあり、アイデアについて収集しやすいのです」

鈴村氏「ただ、このクラスの方とお話をしたからといってヒット商品を簡単に作れるわけではありません。企画というのは狙って売れるものではないので常にテストするという姿勢が重要だと思います」

水田「常にテストですか」

鈴村氏「はい、常に市場に投入して売れなければ何が悪いのか。ネーミングなのかパッケージなのか、価格なのか、味なのかなど、検証作業を繰り返していくのです」

鈴村氏「ヒット商品を一発で当てに行くのではなく、常にテストだと思って商品を投入して改善を繰り返していく。この作業がヒット商品につながる可能性を高めているのだと思います」

水田「なるほど、でも毎回商品を提案してはずしていれば顧客から信用を無くすということはないのですか?

鈴村氏「それはないと思っています。基本的に売り場は常に新しい商品を入れていかなければ飽きられてしまいます。だから常に新しい商品の提案を求めています。売れる・売れないに関係なく、常に新しい企画をぶつけていく行為自体に価値があると思います」

水田「確かにそうですね。お店側としては新しい企画を提案し続けてくれた方がうれしいですよね」

鈴村氏「そうです。それにたまにしか提案しない時より新しい商品を提案し続けていた方が、いざ企画がうまくいかなかった時にもお咎めが小さいですから」

この言葉を聞いて『なるほど』と感心しました。

新しい商品を企画し提案し続けると、その行為自体が相手にとってメリットがあり、その回数を量産することで『返報性の原理』が生まれているのだと思いました。
※返報性とは、報いられたら報い返したいと思う心理

その心理効果を狙って営業していた訳ではないと思いますが、経験則でそのような行為が効果的であるということを身に付けていたのでしょう。

そして、その裏付けとして鈴村さんに年間の商品企画数を確認すると、年間170~180アイテムの提案をしているとのこと。

ほとんど毎日のペースです。

「量が質を凌駕する」という名言がありますが、まさに企画提案の量を担保することで、顧客の反応という情報が集まり、そしてヒット商品を生む結果につながっているのではないかと思います。

 

■ヒット商品を簡単に作る方法
ヒット商品を連発して生み出している鈴村さんですが、ヒット商品を全て1から作っていくだけでなく、もう1つの方法も活用しながらヒット商品を生み出しています。

鈴村さんはヒット商品を生み出すパターンは2通りあると言います。

その1つは顧客とのコミュニケーションで生み出されるヒット商品、そしてもう1つは「競合のヒット商品を活用する」という方法だと教えてくれたのです。

ヒット商品は無から生み出すのはかなりの至難の業です。

なぜなら消費者心理は推測することが難しく、その移り変わりも激しいからです。

しかし、今売れている競合品のマネをすれば、効果検証済みのアイデアを拝借するわけですから、かなりの確率でヒットすることは間違いなしです。

消費者心理を推測するのではなく、テストマーケティングを終えた状態で商品開発をする訳ですから。

ただ、売れている競合品のアイデアを拝借する場合は『あること』を最優先しなければならないと鈴村さんは教えてくれました。

それは「スピード感」です。

ヒット商品は、一度ヒットするとそのアイデアを拝借する競合が大勢でてきます。

ですから、いち早くアイデアを拝借して商品化していかなければそのうま味はどんどん薄れていくのです。

・売り場で目立った陳列をされている商品をチェック
・売れていることが分かればすぐさま形を変えて商品化
・そしてあとはスピード感を持って市場に展開

市場投入の「スピード」こそが優劣を分けるポイントとなるのです。

いかがでしたでしょうか?

今回は営業担当者だけでなく、商品企画に携わる方々にもかなり参考になったのではないかと思います。

商品開発はセンスではなく、

「商品へのこだわりを捨て、テストマーケティングを繰り返す」
「競合品のアイデアを拝借して、スピード感をもって展開する」

これがヒット商品を生み出す秘訣だったのです。

本当に参考になるお話でした。

鈴村さん、ありがとうございます!

 

■水田チェック
今回、鈴村さんのノウハウで特筆すべき点は、提案量による顧客の囲い込み戦略だと思います。

常に新たな提案を繰り返すことで、返報性の原理が働き、商品企画がハズレた時でもお咎めが小さいというのはおもしろい話です。

そして提案の数が多いと、顧客も特別感を与える結果につながっているとも考えられます。

「ハード・トゥ・ゲット・テクニック」という言葉がありますが、人は特別扱いに弱いという心理効果があります。

提案の数を大量に行うことによって「うちには良くしてくれている」という特別感が湧き、そしてその行為が鈴村さんと顧客の関係性を強くしていっているのだと思います。

しかし、なぜこのような大量に提案する方法を身に付けたのでしょうか?

実は、このように大量に提案する背景として、鈴村さんは口下手であったことが大きいと話していました。

当社に入社して営業になり立ての頃はお客様との話が続かず、気まずい雰囲気になった事が何度もあったようです。

その空気に耐え切れず、何か解消方法を考えていた時に思いついたのが商品提案なのです。

「何かしら商品の企画を持ち込めば、顧客との会話が弾む」

それから顧客に訪問する際には何かしらのネタを持ち込み話に行ったのです。

「禍(わざわい)を転じて福となす」

何がきっかけでトップセールスになれるのかは分かりませんが、話し上手な人だけがトップセールスになっている訳ではないという事実は、うまく話せないことに悩んでいる営業にとっては勇気づけられる内容だったのではないでしょうか。

 

■インタビュー企業
社名:株式会社長登屋
住所:愛知県北名古屋市高田寺東の川12
TEL:0568-22-8511
URL:http://www.nagatoya-gift.com/index.html

第53回リアルトップセールスインタビュー

太田さん(フランソア)

 

第53回のリアルトップセールスインタビューは(株)フランソアの太田さんです。

太田さんが勤務しているフランソアは九州地区では有名なパンメーカーの企業です。

パンメーカーと言えば、ヤマザキ製パン、フジパン、敷島製パンなどがありますが、そういった企業との競争環境の中で、高品質を売りに九州地区で営業を展開している企業です。

今回ご紹介する太田さんは、増税で市場環境が厳しい中、「売上達成率」「既存店年比」「粗利達成率」の3つの部門で目標を達成しています。

この3冠を達成したのは約40名いる営業の中で太田さんを含めたった『2名』のみ!

また、当社の経営幹部の話から、太田さんは売上の増減が少なく業績が安定しているとのこと。

では、なぜ売上が安定しているのか、そして高い粗利額を獲得するために何をしているのでしょうか?

その点を解明すべく太田さんより話を聞いてまいりました。

 

■パンメーカーのトップセールスが行う習慣とは
パンメーカーの営業先は「スーパー」「コンビニ」などの小売店です。

小売店のバイヤーに店舗のパンの販売状況を確認し、状況に応じて新商品の企画を提案したり、定番の入替などの提案をしたりしています。

営業活動のほとんどは、このように担当店舗を巡回しての提案活動を行っていますが、太田さんは店舗を巡回する際に、必ずある行動を徹底するようにしているのです。

その行動とは、バイヤーや担当者に状況を確認しにいく前に、必ずパン売り場の確認を徹底しているということです。

この行動は入社当時に上司であった川崎部長の教えであり、売り場を定点観測することで売り場の変化に気づき、売り場の変化が顧客を知るという点で非常に重要な行為になるからなのです。

その売り場の中でも特に注視する場所は「定番」の棚です。

なぜ定番の棚を注視するのかというと、「定番の棚」にはバイヤーや担当者の考えが色濃く出るからだというのです。

特売品というのは顧客を引き寄せるためにその時その時のお買い得品を投入しますが、定番品はそこまで頻度高く入れ替えるものではありません。

つまり、バイヤーや担当者の考えの変化が見えやすい場所なのです。

商品の入替があれば、バイヤーや担当者が売り場に不足感を感じていた可能性は高く、その変化をいち早くチェックするためにも売り場のチェックは欠かせないというのです。

 

■常識vs 非常識
売り場を定点観測していると、他社が注力している商品も見えてきます。

そして、注力している商品が実際に売れているかどうかの確認を行い、売れていないという情報をつかむ事ができれば提案のチャンスです。

提案のチャンスが訪れると、すぐさま、今、自社で売れている商品の話題を展開してシェア獲得の動きに移ります。

まずはお試しといった感じで小さく入り、そこから売れ行きをバイヤーや担当者と確認していく作業に入ります。

太田さん「先日、入れ替えた商品の売れ行きはどうですか?」

バイヤー「なかなかいい調子だよ。提案してもらって良かったよ」

しかし、入れ替えた商品がいつもうまくいく訳ではありません。

他店で売れている商品を投入しても、売れないことも当たり前のようにあります。

こういった状況が発生した場合に、違う商品を提案して挽回を図ろうとするのだろうと私は思っていたのですが、太田さんからは意外な回答が返ってきました。

水田「切り替えた商品が売れない場合は、違う商品を提案するのですか?」

太田さん「もし、提案した商品が一度売れなくても、自分が「売りたい」、「売れる」と思う商品であれば、商品特徴が伝わるPOPをおいて目立つようにします」

水田「もし、それでも売れなければどうしますか?」

太田さん「それでも売れなければ、棚の底を浮かせてパンが目立つように陳列するようにします」

水田「それでも売れなければ?」

太田さん「レイアウトを変更します」

水田「それでもだめなら?」

太田さん「什器の場所を変えたりします」

水田「それでもダメなら?」

太田さん「商品を日持ちするものに変えて廃棄ロスを抑えます」

水田「それでもうまくいかなければどうしますか?」

太田さん「パンのフェイスを減らして、違う商品を置いてもらうようにします」

水田「パンのフェイスを減らす行為は自分の売上を下げる結果になると思いますが、それでもそのような提案を行うのですか?」

太田さん「はい、そうですね」

正直、意外でした。

商品の入替を提案するのかと思ったら、その提案はかなり後。

まずは商品の見せ方を変えるということころに焦点が当たっています。

しかも最終的には顧客の利益を考えて、パンのフェイスを減らすという提案まで行うのです。

そして一番驚いたことは、私のこのような面倒な質問攻めに対して、全て即答してきたところです。たまにこのような対応をしているのではなく、常に実践していることが窺えました。

しかし、このような営業方法は営業の定石からいうとあまり選択されない方法です。

POPやレイアウト変更あたりまでは行うかもしれませんが、それでも売れなければ、売れない理由は店舗の立地や集客に原因がある可能性が高いと考え、諦めて他の店舗に力を注ぐのではないでしょうか?

ある程度のところで顧客を見極めて、「販売力のある小売店に注力する」

それが営業の定石のような気がしていたのですが、太田さんの行動はこの効率的な営業の真逆をついているような気がしました。

そこでふと思ったのが、やはり他社の営業がやっていないことをやるからこそ、他とは違うと感じてもらうことができるということ。

そして、売り場のことを誰よりも考えてくれるので、定番といった店舗にとって重要な売り場を任せてもらえるのではないかと思ったのです。

営業の非常識=誰もやっていないこと

太田さんの営業活動を聞いて改めて「抜きんでた営業とは何なのか」を学んだような気がしました。

 

■水田チェック
昔、広告と言えばDMやチラシといった紙媒体が多く使われてきました。

そしてインターネットが普及している現在ではオンラインの広告が中心となってきています。

時代の流れによって広告のあり方は変わってきますが、オンラインがあたり前の時代だからこそ、あえて紙媒体での広告は目を惹くものになったりします。

営業活動でも質を高める時代に、量で勝負してみる。

効率が求められる時代だからこそ、非効率で勝負してみる。

あえて今の時代の逆をついてみると、それだけでその他大勢ではなく、唯一の存在になってくるのではないでしょうか?

人と違うことをするというのは恐怖感や不安感をもたらします。

「そんなやり方は間違っている」
「誰もそんな営業方法はしていない」

その他大勢と同じことをしていないと、さも間違っているという風潮が日本にはあるかもしれませんが、よく考えるとその他大勢と同じことをやれば、ただの普通の人です。

他社の営業とは違うと思われるためには、

「あえて他の営業担当者とは逆のことをやってみる」
「あえて普通の営業ではやらないことをやってみる」

という考えも必要なのではないでしょうか。

あるマーケティングの権威が

「どのような道を選んだにせよ、手本となる成功例が見当たらなければ、周囲の人々がしていることを眺め、単にその逆の事をすればいい。なぜなら、常に大多数の人間は間違っているからだ」

というナイチンゲールの言葉を引用して、周りに否定されるマーケティングプランこそ成功する可能性が高いと言いましたが、今回はまさにこのような考えに気づかせてもらったような気がしています。

 

■インタビュー企業
社名:株式会社フランソア
住所:福岡県糟屋郡新宮町緑ケ浜3丁目1番1号
TEL:092-941-2323
URL:http://www.francois.co.jp/

第52回リアルトップセールスインタビュー

都築さん(愛知BK)③

 

第52回のリアルトップセールスインタビューは愛知銀行の都筑さんです。

今回のインタビューはこれまでで「初」の業界、銀行業界のトップセールスです!

都筑さんの担当業務は融資業務であり、地域の企業に対して運転資金や設備投資などの提案を行っています。

これまでの都筑さんの実績には目を惹くものがあり、その実績をご紹介すると、

個人実績では、
・頭取賞1回(430名中 上位3%が表彰対象)
・優秀賞1回(430名中 上位5%が表彰対象)

そして都筑さんが所属する支店については、総合業績表彰として「金賞」「銀賞」「敢闘賞」を多数受賞しており、その業績のけん引役となったのが都筑さんなのです。

このような数々の表彰を受けている都筑さんですが、融資の提案方法として「借換え」を得意としています。

「借換え」とは、現在メインバンクとなっている他行の銀行に変わってこちらがメインバンクになるという手法です。

いわゆるメインバンクの地位を奪取する営業です。

商品がお金であれ、有形・無形の商品であれ、顧客のメインを勝ち取ることは非常に難しいことです

メインというのは取引関係が深く、かなりの信頼を置いているのでメインになっている訳ですので、簡単に変更されるようなものではありません。

その簡単にできない代物を得意としている都筑さんに、なぜそのような芸当ができるのかを確認してきました!

 

■銀行業界のジレンマ
私も昔、金融業界で融資を担当していたということもあり、企業融資の難しい点はよく把握しています。

通常の営業であれば、企業の健全状態とニーズに相関関係はありません。

優良企業であろうと、危ない企業であろうと、ニーズは発生します。

しかし、融資というのは本来貸したい先である優良企業ほど、資金需要が発生することが少なく、どちらかというと資金繰りがうまくいっていない企業の方が、資金ニーズが発生しやすい特性があります。

とはいえ、危ないと思われる企業に融資することはできませんので、この「企業の健全性」と「資金ニーズ発生の可能性」が逆相関の関係にある中、どのように営業業績を上げていくかが課題です。

また、企業に資金需要が発生した場合、まず最初にメインバンクに相談を持ちかけている可能性が極めて高く、メイン以外に振ってくる案件と言えば、メインバンクが断ったであろう案件、いわゆる実現可能性が低い相談内容であることが多いのです。

要するに、ニーズがあるからといってすぐに契約とはならない、一筋縄ではいかない特性を持っているのです。

このような業界特有のジレンマがある中で、どのようにメインバンクの地位を奪取しているのでしょうか?

 

■メインバンクを獲得する営業術とは
都筑さんいわく融資業務のポイントは、顧客のニーズに沿う形で案件組成を行い、与信判断上問題ない案件としてまとめることが銀行営業の腕の見せ所とお話しされていました。

先程解説した通り、メインバンクでない限り、企業からの融資相談は実現の可能性が薄いものばかりです。

「融資に対して担保がない」
「企業体力から顧客が要望している金額は大きすぎる」
「今の与信状態からこれ以上は追加融資できない」
など・・・

そんな要望をそのまま審査に通しても、まず融資は下りないという内容ばかりです。

多くの銀行マンは、そのような内容に一律の回答しか行いません。

「やはり追加で担保がないと・・・」

「審査には話してみますが、この内容はまず難しいと思います・・・」

難しい案件に対してはほとんどこのような回答です。

しかし、都筑さんは一見無理と思える融資であったとしても「その可能性を徹底的に探るべき」というポリシーを持っています。

そのため誰もがやっている表面的な企業の業績や資金繰りの状態を聞くだけでなく、より正確に企業の実態を把握することを心がけているのです。

例えば、顧客のビジネス、業界の外部環境、決算書に記されている各科目の実態など。

その実態把握で得る情報収集の量は、電話帳1冊分にも匹敵するほどの量だといいます。

そこまで企業を徹底的に把握し、他の銀行員が発想もしなかったような方法で、(完全にではないにせよ)顧客の要望を形にしてしまうのです。

顧客からのややこしい依頼というのは、通常の営業マンであれば嫌がります。

なぜなら、時間をかけてモノにならなければ無駄になりますし、そうなる可能性が極めて高いからです。

そのため早めにできないと判断して、見極めるのも1つの方法だと思います。

しかし、どの企業も断りを入れてきたような内容を実現することができれば、圧倒的な信頼を獲得できるチャンスでもあるのです。

銀行業界の競争はメインバンクの地位を勝ち取れるか否かで取引の「額」は極端に変わってきます。

また、保全(貸金に対する担保)を優先的に取れるかどうかにも関わってきます。

都筑さんは、通常の営業マンが避けている案件を相談された時に、借換えのチャンスだと認識し、相談されたニーズを実現すべく行動するのです。

そして、そのあえて難案件に挑む姿勢がお客さんにメインバンクとの取引を止めて「あなたにお願いするよ」と言わせているのです。

 

■案件組成のスキルを身に付けたきっかけとは
しかし、いくら情報収集を徹底しているといっても他の銀行員がなかなか発想できないアイデアを、早々簡単に出せるものではありません。

そこで、都筑さんに案件組成を生み出すために何かやっているのかを確認しました。

そうすると、やはり他人にはできない案件組成の裏側には他の人とは違った努力があったのです。

まず、案件組成のアイデアをストックするために常日頃からやっていることは、できる営業マンの案件の内容を確認し、気になった案件組成があると、その営業マンに質問攻めにしてアイデアを盗み取ります。

そしてそれだけではありません。

都筑さんは自分が借換えを逆にされてしまったお客様には、徹底的に借換えをされてしまった理由、そしてその背景、どんなきっかけで他行に借り換えようと思ったのかなどを徹底的に聞きこむのです。

その理由を教えてもらえない時は「土下座してでも聞きこむ」と話していました。

恐ろしいばかりの執念です。

しかし、この借換えをされてしまった理由を意地でも聞きこむのには実はある過去の体験があったからなのです。

その経験とは、渉外担当となってまだ間もないころ担当していた大口顧客が某銀行に奪われるという体験をしたのです。

その時の金額は非常に大きく、1億円の融資先を他行に持っていかれてしまったのです。

1億円もの融資先を他行に奪われると、支店長が他の支店に飛ばされる程のインパクトがあり、相当大きな出来事でした。

その融資を何とか防衛するために顧客に、なぜ他行に移すのか、何がきっかけだったのか、他行がどんな提案をしたのかを聞きこみまくったのです。

結果的に、その顧客は帰ってきませんでしたが、その時の聞きこんだ内容、他行の案件組成のやり方を聞きだせたのはこの後、都筑さんにとって非常に大きな財産となったのです。

実は某銀行に大口客を奪われてしまったのですが、そこでやられた提案方法を別の新規で実践したところ、借換えに成功!

その金額はなんと3億円です。

これ以来、都筑さんは借換えの提案が楽しくなり、今でも借換えを行うために常日頃から案件組成のアイデアを様々なところから学び、そしてそのインプットの量が、案件組成の礎となっているのです。

 

■水田チェック
アウトプットの重要というのはよく巷に叫ばれています。

しかし、良質なアウトプットを生み出すには、大量のインプットが必要です。

アイデアという言葉を聞くと、何か非常に創造性の高いものと思いがちです。

何か得体のしれないところから突然アイデアが出てくるといった、神秘的なものを連想しがちですが、全く「無」から生み出されるアイデアというものはありません。

既知と既知が組み合わさってアイデアはできるものなのです。

アイデアを生み出すのはインプットの量。

そして一番良質なインプットは現場の生の声。

業績を上げている人間ほど、現場の生の声を豊富にストックしており、現場の声からアイデアを創出しているのです。

あなたも現場の生の声を聞いていると自負されているかもしれませんが、本当にそうでしょうか?

「なぜ、あなたの商品を買ったのか?」

「その時にどんなことに悩んでいたのか?」

「あなたの商品(業界)に対してどんな勘違いをしていたのか?」

「なぜ、数ある競合の中からあなたを選んだのか?」

受注してしまうと喜びのあまり、なかなかこのようなことを確認していないものです。

しかし、このような顧客の当時の悩みや思い込みをストックしておけば、その情報は必ず営業活動に大きな力を与えてくれるはずです。

 

■インタビュー企業
社名:株式会社愛知銀行
住所:愛知県名古屋市中区栄3-14-12
TEL:052-251-3211
URL:http://www.aichibank.co.jp/