
「ピンポーン!」
「お!もしかして・・・」
家のチャイムが鳴り、急いで玄関口のモニターを除くと・・・
「来た!」
ヤクルトおばちゃんが3回目の接触を図ってきたのです。
なかなか運の良いおばちゃんです。
うちの嫁の目をかいくぐり、私との3回目の接触に成功。
これは楽しみと思いながら玄関のドアを開けたのです。
「ガチャ!あっどうも!」
私ももう完全に顔見知りのような対応。
そして第一声を心待ちにしていました。
ヤ「大変ですね、在宅勤務も」
水「まぁ、そうでもないですよ」
ヤ「以前、お渡ししたチラシ見ていただきました?」
水「いえ、見ていませんね」
ヤ「お得な情報が入っていたこんなチラシです」
水「ああ、それですか、見ましたよ!」
ヤ「いかがですか、是非良ければ・・・」
水「そうですね、今のところは・・・」
ヤ「分かりました、私もこの辺りよく回っていますので、また是非!」
水「(えっ!ここでストーリーは終了か?ならば押してこい!3回もドア開ける人なんてなかなかいないぞ!)」
ヤ「どうもありがとうございました~」
どうやら3回でストーリーが終了したようです。
あの時点で何が必要だったのか。
3回目のタイミングでクロージングは早いかもしれない。
そう考えると、もう少し売り込まない状態で接触をしても良いのかもしれない。
そこで、更にヤクルトを渡して来たらアンダードック効果の影響で、次回は購入していたかもしれない。
非常に惜しいところまで来ているのに、なぜ突っ込めなかったのだろうか・・・
しかし、致し方ない点もある。
営業というのは他の職種に比べて体系立った理論が少ない。
大学でも、経営学やマーケティングという学問があっても営業学という学問はない。
たった少しの知識があれば、ここでまた新たな顧客にヤクルトを配るよりもよほど高い成約率だったのに・・・
そんな口惜しい気持ちでいっぱいになった3回目の接触でした。
収入を決めるのは営業

決算書のPLで一番上にくるものは何でしょうか?
そう「売上」です。
ではそれをコントロールできる存在は誰でしょうか?
そう「営業」です。
世の中で価値の高いビジネススキルはいくらでもありますが、そのスキルのすべては売上が立った後に生きてくるものばかり。
会計のプロがいくらコストダウンを図ろうが、売上を上げなければいずれ限界がきます。
人材を育成するプロがいたとしても、売上が立たなければ雇用し続けることもできない。
高度なファイナンス理論を学んだとしても、売上が立たなければ投資する資源もない。
では、その売上を立てるために高度なスキル、才能が必要でしょうか?
実はここにはそんなに高度なものを持ち合わせていなくても伸ばすことはできます。
なぜなら、営業は少し人よりも勉強するだけで群衆の中からすぐに抜け出すことができるからです。
多くの営業が売ることについてあまり学んでいません。
だからこそ少し学ぶことで抜きんでることができる。
いわばブルーオーシャンの職種。
そして営業は学べば学ぶほど、試したくなることが多くなり楽しくなってくる。
この事実に気づいているのは一部のトップセールスだけだという事を知っておいた方が良いかもしれません。

先日のRTS勉強会でのこと。
参加者の方からある質問がきました。
その質問内容とは、「トップセールスは普段、どんなこと心掛けながら営業をしているのですか?」というものです。
これに回答したのが日経の竹内さん。
その内容を聞きながら、まさにそうだよな~と思いながら聞いていたのです。
その内容とは、、、
「営業を楽しむ事」
「楽する」と「楽しむ」という字は同じ「楽」という文字になる。
いかに楽するかという発想は極めて重要であり、この発想がアイデアの源泉となる。
そしてこの発想を持ち続けることで工夫が生まれ、その工夫がうまくいくか、いかないかというせめぎ合いに発展し営業を楽しくさせるのです。
このような発想はトップセールスの誰しもが持っており、みんな楽しそうに売ることを語ります。
だからこそパワフルであり、前向きなのです。
そんな会話をしながら、ふと昔のことを考えていました。
いつから営業が楽しくなったのだろうか・・・
私は新卒で入社した1年目は、全くと言っていいほど営業が楽しくありませんでした。
最も大きな理由は、業績が低迷していたこと。
もっと自分ではできると思っていたにも関わらず、全く実績がついてこない。
契約直前までいって何度も契約が流れる。
この状態を繰り返していると、段々、顧客と話すことが怖くなってくる。
何か機嫌を損ねるような一言を言ってしまうと契約が流れるのではないか。
何とか機嫌を損ねないような話をしなければ・・・
この時の私はいつも商談中に神経を張り巡らせていて、商談1件1件が終了するたびに疲労困憊していたことを思い出します。
顧客との会話は何か腫れ物に触るかのような様子。
当然ながら、このような雰囲気を出していれば顧客からは何かを隠しているのではないかと勘繰られ、(商品が金融商品だったので特に)契約は流れる・・・
そして更に怖くなる。
そんな状態を繰り返していました。
そのような状態を一変させることができたきっかけは何だったのだろうか?と考えると、やはり転勤が大きなきっかけでした。
最初に赴任していた高崎支店は、大所帯(20名)の店舗。
次に赴任した店舗は営業所で、店舗内は7名ほどの小さな店舗。
その小さな店舗では、支店の時とは違い中途入社の海千山千営業の巣窟。
テレアポ営業のはずなのに、自分のスタイルと合わないからといって飛び込みに行く。
顧客の前で、仲良くなれるからという理由でタバコを吸う(しかも初対面)。
昼間に寝ていて、夜になると活動する。
そんな変な営業ばかりがいました。
しかし、その1つ1つは全て成果を上げるための行為であり、その担当者1人1人の工夫だったのです。
そんな環境の中、恐る恐るしていた私の営業スタイルに徐々に変化が見え始め、営業スタイルが変わりだしたのです。
これまで顧客の機嫌を損ねないような営業(ある意味、主導権は顧客に預け、何も考えていなかった営業)から、どうすれば契約に至るのかを考え出したのです。
どうすれば成果をコントロールできるのか・・・
主導権はどっち?

営業は顧客のニーズを満たしていくのが役目だと考えられています。
しかし、この意味を多くの場合はき違えていて、顧客の言葉通りにすることがニーズに応えていることだと勘違いしています。
お客様の言葉通りでは、予想通りの価値であり、予想以上の価値にはなり得ない。
「ご用聞き営業では、お礼を言われることはあっても感謝されることはない」
こんな文面をどこかの書籍で読み、未だに頭に残っていますが、お客様の望むことを望むように実現するだけでは、感謝されることはないのです。
ある意味、あなたが上の立場で教えてあげる。
これが実現できてこそ本当に満足させることができるのです。
あなたは、今、失注を恐れて顧客の言う事ばかりを聞いているなら明日から殿様営業に切り替えてください。
殿様となり顧客に教えてあげてください。
そして殿様営業スタイルに切り替えることで、顧客から是非『感謝』を受け取ってください。
その感謝を受け取れば、あなたの営業人生は大きく変わる事は間違いないのですから。

在宅勤務をしていたある日・・・
「ピンポーン」
「?誰だろう・・・」
ここ最近、在宅勤務をすることが週に何回かあります。
そうなると、平日の昼間に私一人が家にいるというシチュエーションも出てくるので、誰かが来ると玄関に出なくてはなりません。
この日も、午前中にインターフォンの音が鳴り、モニターを覗いてみると、、、
「ヤクルトおばちゃん?」
インターフォン前にヤクルトおばちゃんが立っていたのです。
ヤクルトなんか取っていたかな?と思いながら返事をしてみるとおばちゃんが、
「今日はヤクルトについて知っていただきたいことがあってお伺いしました。あくまで知っていただくだけです!」
なるほど営業か・・・と思いましたが、飛び込みの礼儀作法である「知ってほしいだけ」を強調していたので、ひとまずドアを開けることにしました。
ドアを開けるとヤクルトおばちゃんから元気の良い挨拶。
初対面の印象は問題なし。
そしてほどなくヒアリング。
ヤクルトを取っているか、取っていないならヨーグルトは?などの質問をいくつか受けながら、もしよければと試供品を手渡してきました。
なるほど、いい流れ。
返報性の法則か・・・
しかもヤクルト2本ぐらいなら罪悪感もなくもらえる。
そしてほどなくヤクルトのプレゼン。
ヤクルトが腸内に良いこと、便秘に効くなど。
そして更に効果は広がりインフルエンザ、はたまたガン予防にもなるとか。
「ガン予防になるの?それが本当ならガン保険を解約してヤクルト取るけど」と思いながら話を聞いていました。
そしてヤクルトおばちゃんから「よくこの辺りを回っている」との言葉が出てきて思わず、、、
「あのー、それで採算取れるんですか?」
思わず失礼なことを聞いてしましました。
しかし、そんな失言にも笑顔で対応。
なかなかメンタル強いなと思っていたところ最後のクロージングがやってきました。
「在宅されているのであれば次回もお会いできるかもしれませんね。次回は腸内にどれぐらいの効果があるのかを検証したデータをご説明にあがります!」
おお!次回予告!
「検証データに興味はないけど、このストーリー仕立ての営業手法が素晴らしい!」
「これはどんなストーリーになっているのか是非知りたい!」
そう思った私は次回もヤクルトおばちゃんが営業に出たら話を聞いてみようと心に決めたのです。
ストーリーの破壊的威力

新規営業、特にこのような飛び込み営業においては1度でクロージングするのではなく、何度かに分けてストーリー仕立てにするのは絶大な効果があります。
新規顧客のように警戒心が高い顧客は、まず話を聞いていない。
そして話を聞いたとしても、本当かな?という疑心暗鬼の気持ちが蔓延している。
こんな顧客を相手にするにはストーリー仕立てで何度か接触する機会を設け、警戒心を解く。
そして警戒心が解かれてからクロージングに入るというのが王道です。
そしてこのストーリー仕立てにするというのは、商談の回数でストーリーにしていく方法ともう一つの方法があります。
それが単品売りを止めてパッケージングした商品を提供すること。
例えばおにぎり1個を売ると単品売りになりますが、これをパッケージングしてみる。
パッケージングとはおにぎりを8個にしてお茶を4本加えてみる。
そしてそこに卵焼きとから揚げのセットをつけてみる。
そして無料でお手拭き、お皿、お箸をつけてみる。
そうなるとここでストーリーができあがる。
その名も「4人家族のピクニックセット」。
「運動会観戦セット」でも良いかもしれない。
そしてそのストーリーを思い描かせることができれば急に価格のことを忘れてしまう。
そんな効果がこのストーリーに宿っています。
あなたは今、単品売りをしていませんか?
もし、単品売りをしているなら、その商品をパッケージングしてみてください。
そうすることであなたの販売単価がみるみるうちに高くなってくるかもしれません。
一度、試してみる価値はあると思います。
追伸:後日、このヤクルトおばちゃんは家に訪問していたようです。
その時、私はいなかったのか、手紙だけが置いてありました。
そしてその手紙を見ながら先程のエピソードを妻に話していると、
妻「次回、私が出たら完膚なきまでに断ります!」
営業大好きな私と営業アレルギーの妻・・・
この落差をどう対処してくるか・・・ヤクルトおばちゃんに期待しています。

「ふ~ん、これが鬼滅の刃か」
在宅勤務での仕事を終え、リビングに向かうと娘が食い入るようにアニメを観ていました。
それが「鬼滅の刃」。
巷ではかなり有名なようですが、アニメや漫画にあまり興味がない私はその有名なアニメを初めて目にしました。
おそらくアニメや漫画のカテゴリーにおいては、私はイノベーター理論でいう「ラガード(遅滞層)」に分類される。
そんな「ラガード」の私の目にも入るという事は、凄まじい大ブレイクなのかな?と、ふと思いました。
そこまで流行っているのなら少し観てみるかと思い、しばらくの間、眺めていたのです。
そうすると、何かの違和感が出てきました。
「このアニメ、、、どこかで見たことがある・・・」
何となく同じようなストーリーを観たことがあり、それが何なのかが気になり始めました。
「進撃の巨人?」
「いやちょっと違うか・・・」
「他に何かあったような・・・」
「・・・」
「そうか彼岸島か!」
「このストーリー彼岸島に似ている!」
「でも同じようなストーリーなのに、なぜこんなに売れているのだろうか・・・」
そう考えているうちに、なぜこのアニメが売れているのかを考えてみたくなったのです。
「鬼滅の刃は何が売りなのか?」
「この兄弟愛が売りなのか?」
「そういえば過去に売れていたワンピースは『仲間』というキーワードが売りになっていた・・・」
「そう考えると共通するところは『絆』なのか・・・」
「そういえばラグビー日本代表も『ワンチーム』」
「働くミレニアル世代は仲間や社会に貢献するのが好きらしい・・・」
なるほど、今、ヒット商品を出すには「絆」がテーマでなくてはならない・・・
そんなことを勝手に妄想していたのです。
一度見ればもういいかと思いながらも、なぜ売れているのかという疑問だけは私の頭の中にずっと残っていました。
そしてある日、ふとネットニュースを見ているとこんなキャッチコピーが目に入ったのです。
『鬼滅の刃』“予備知識ゼロ“で観た人から飛び出した「素朴な疑問点」
おっ!これは!
数々あるネット記事の中で、ひときわ目立つこのキャッチコピーを思わずクリック!
おそらく私と同じように、なぜこのアニメが売れているのか?と考えた人がいるのではないか?
そう思った私は、興味津々でその記事を眺めたのです。
しかし、書いてあったことは・・・
登場人物の解説。
「ねずこ」がなぜ竹をくわえているのとか、どうのとか・・・
「ああ・・・どうでもいい・・・」
このネット記事に肩透かしを食らったような気分になったのです。
思わずクリックの裏に

記事の中身は全く私に関心のないことでしたが、私は思わずクリックしてしまいました。
それはなぜなのでしょうか?
それはこのキャッチコピーがより具体的な1人に絞り込みメッセージが書かれてあったからです。
『鬼滅の刃』“予備知識ゼロ“で観た人から飛び出した「素朴な疑問点」
鬼滅の刃を観た人の中で、予備知識がゼロで、疑問を持った人、そしてその疑問が素朴であること。
この具体的に絞り込んだメッセージが秀逸です。
これを読んだ私は思わず、
「これって俺のことだよね?」
とまさに共感したのです。
溢れるメッセージ、あふれる情報、あふれる営業行為。
その中でもどうやってあなたのメッセージに興味を持ってもらうのか。
そのヒントとなるのが「カクテルパーティー効果」
今日はこのキーワードだけをお伝えして終わりにしたいと思います。

センスメイキング・・・
昨日、とある企業で研修をしていた時に講師であった弊社の酒井がこのような言葉を使っていました。
センスメイキングとは、簡単に解説すると「意味づけ力」。
部下を動かすために仕事に対する意味づけをして、説明してあげるという事です。
この意味づけ力というのは部下を動かすこともそうですし、自分自身を動機づける上でも語られることが多いと思います。
そしてこの意味づけ力というのは、部下指導や自分自身の動機づけ以外にも必要な力となってきます。
ある意味、今後、人間にとって絶対不可欠な力・・・
そんなことを私は予感しています。
それはどういうことかというと、、、
今後、AIと人間との働く領域として、人間側にこの意味づけ力が求められるからです。
現在、AI、ビッグデータ、Iotと横文字が飛び交い、何となく言葉は知っているものの、具体的に質問されると逃げたくなる・・・
そんな人は世の中に多く存在していると思います。
この用語たちは独立して存在しているように見えますが、実はつながりがあるという事が理解できると、テクノロジーの世界が少しだけ分かりやすくなります。
実はすさまじく簡単に説明すると、一連のキーワードはこんな感じで紐づいています。
Iotでデータを収集し、そのデータが膨大に蓄積されていく。
クラウドの存在によりあらゆる場所でデータが膨大に蓄積できるようになり、それがビッグデータとなる。
そのビッグデータを処理能力の高いAIで処理を行い、ビジネスに活用される。
例えば、WEBサイト上で書籍を購入し、その購入履歴や属性情報が蓄積されることで、どの書籍を読んだ人が次に何を読むのかという相関関係を導き出し、そしてその相関関係がレコメンド機能として使われる。
そんなイメージです。
これからはAIの存在により、膨大なデータを処理し、そこから相関関係を導き出すことができるようになりました。
しかし、その相関関係をどう解釈するかは人間の仕事。
例えば、日本では自販機の2列目の一番左が売れているというデータがあるようですが、この相関関係に意味づけを行い、解を求めていくのは人間の仕事。
一時期、マーガリンの消費量と離婚率に相関関係があるとの情報がありましたが、これも意味づけができることで初めて価値を生む。
(実際は因果関係なしとの判断のようですが)
これからAIと共存していくと考えると、膨大なデータから相関関係を導き出すのがAI 。
そして、その相関関係から意味づけ力を行っていくのが人間。
そんな役割分担となっていくことでしょう。
裏を返せば、意味づけできない人は価値なしの時代がやってくる。
そう考えると、「仕事をやる理由を教えてほしい」とか言っている人は本当に不要になる(粗大ごみレベル)。
そんな時代がやってくることは間違いないと思います。
意味づけの大きな力

営業の世界では成果を上げるためにモチベーションを高めるという事がよく語られます。
しかし、無理にモチベーションを高めてもあまり成果には結びつきません。
「毎朝、ポジティブな標語を唱える」
「やる気が高まる音声を聞く」
「勢いよく外に飛び出していく」
しかし、夕方になると肩を落とし、意気消沈する・・・
こんなシーンはよくあると思います。
これは自分のセルフイメージを変えることなく、ただひたすらやる気だけを高めた結果です。
そうではなく、まず自分のセルフイメージを高める。
あなたは何のために仕事をしているのか・・・
その意味は・・・
そんな意味づけから変えていかなければなりません。
そして、その意味づけの中、人の役に立ちたい・・・
そんな意味づけが出たのであれば、それは大きな力になります。
そしてその意味づけが明確になれば多少おせっかいをしてでも、お客様に踏み込むようになるでしょう。
「他人の家に土足で上がること」もいとわなくなるかもしれません。
あなたは今の仕事にどんな意味づけをしていますか?
今後、意味づけ力が必須になっていく中、あなたはどんな意味を持って仕事をするのでしょうか・・・
そんなことを考える週末を過ごしてみるのも悪くないと思います。