食品卸

第44回リアルトップセールスインタビュー

杉山さん(国分)

第44回のリアルトップセールスインタビューは食品卸業界の杉山さんです。

杉山さんはスーパーなどの小売店に食品を卸販売している会社のトップセールスです。

業界特性上、そして組織体制上、営業個人のスキルと実績数字の因果関係が計測しづらいため、今回は具体的な数字に関しては明示できません。

しかし、杉山さんは社内で最速でチームリーダー、副課長に昇進した経歴から、社内での評価は高く、その最速昇進という事実からも非凡な才能を持っていることが分かります。

そして今回のインタビュー内容からも、その才能は垣間見え、非常に参考になるノウハウをゲットすることができました。

本日は、そんな食品業界のトップセールスのノウハウをご紹介したいと思います!

■食品卸業界での差別化とは?
杉山さんが勤務している会社の食品卸業界というのは、競合との差別化が非常にやりづらい業界でもあります。

なぜなら、取り扱っている商品はどこも同じであり、商品自体で差別化することができないからです。

商品アイテムが同じであれば、小売店が購入する判断材料としてあるのは「価格」であり、より安い商品を売ってくれる企業を選ぶことになります。

しかし安売り合戦をしていては、いくら売っても儲からないというサイクルになりかねず、労多くして実入りが少ないというビジネスとなってしまいます。

そのため商品以外でどのように付加価値をつけていくのかが、企業の命題になってくるのです。

そして多くの営業マンが付加価値をつけていく方法として実践しているのが「情報提供」です。

今、食品卸業界はこの提供できる情報の質をいかに高めていくかに勝負の分かれ目があるといっても過言ではないのです。

しかし、情報提供といってもどのような内容の情報を提供すれば付加価値をつけることができるのか気になるところです。

そこで、今回は杉山さんにどのような情報を普段提供しているのかを確認したのです。

■マクロデータを活用した提案
杉山さんは情報を提供する相手として、一番キーマンになるのは「バイヤー」だと話していました。

バイヤーは仕入れる商品構成や陳列などの権限を持っており、かつ現場に密着した立場であるため、商品アイテムについて、一番 頭を悩ませている人物です。

通常の営業マンであれば、自社の取り扱っている商品を採用してもらうべく、目新しい商品や売れ筋の商品の特徴を紹介して採用にこぎつけようとします。

単純に、
「この商品は今売れています」
「この商品は新商品です」
「他の店で結構売れた実績があります」
という紹介が多いのではないでしょうか?

しかし、杉山さんは同様の商品を紹介するにしても他の営業とは違った方法で商品を紹介するのです。

その他の営業とは違った方法というのは、

「マクロデータ」を活用した販売予測を絡めた商品提案です。

その提案方法のいくつかをご紹介します。

1)飲料販売
飲料の販売でもっとも重要視すべきものは「天候」「気温」だと杉山さんは話してくれました。
消費者がどの飲料を買うのかは「天候」と「気温」を見れば概ね分かるというのです。

提案する商品を考えるにあたって、まず調べることは昨年の同時期のデータから気温と飲料の販売量の変化をつかみます

気温の変化に伴って商品アイテム(炭酸・果汁・お茶など)ごとに販売量がどのように推移したのか。

そして、商品アイテムだけでなく商品サイズ(500ml、1.5ℓなど)でも販売量がどのように推移したかを確認するのです。

また、晴れ・雨などによる天候の違いによってどのような商品アイテムが売れていったのかを把握していくのです。

消費者の購買の傾向がつかめれば、あとはその傾向に合わせた商品を提案していくのみです。

提案した商品が必ず売れるということではありませんが、勘と経験のみで仕入れを行っていたバイヤーからすると非常に納得性の高い提案になっているはずです。

2)食品販売
杉山さんが食品販売において参考にしているデータは生鮮食品の統計データです。

野菜であればレタス、キャベツ、トマト。魚であればサバ、マグロなどの商品アイテムごとに、どのタイミングでどのような商品が売れだしたのかを統計データから把握してバイヤーにもその事実を提示します。

バイヤーも感覚で分かっているものの、「●月の第2週から売れ出している」という具体的な時期を提示されると事実を明確に再確認することができるため、非常にありがたがっているそうなのです。

そして、ただ商品アイテムの売れる時期を伝えるだけではありません。

杉山さんはその生鮮食品の販売動向を元に更に1提案加えるのです。

その1提案とは、その生鮮食品自体を買ってくれと話すのではなく、その生鮮食品に関連する商品アイテムを提案するのです。

例えば、ある1時期にレタスの販売量が増えるとします。

そこでレタスの仕入れを促すのではなく、その商品に付随して販売すれば売れるであろう「ドレッシング」などを提案するのです。

単に商品を提案するのではなく、エンドユーザーの食べ方を想定しての提案はバイヤーに響きやすく、必ず関連した商品の提案を欠かさないのだそうです。

3)プライスゾーン
小売店にとっていくらの価格で販売するかは、お店の利益に直結するため非常に重要であり、かつ非常に判断が難しいものでもあります。

お買い得を演出しなければ売上自体が立たないですし、かといってあまり安くしすぎるとお店に利益が残りません。

ある意味、店舗存続の生命線となるのがこの値付けだと思います。

しかし、この値付けをする際に、よくバイヤーが過去の記憶が邪魔して間違った判断をしてしまうことがあるそうなのです。

バイヤーは過去にうまくいった値付けに引っ張られて、過剰に安く販売してしまうことがあるのだそうです。

158円で販売していても同様の売上が見込める中で、128円の金額設定で市場に投入してしまい、結果、総額売上そして利益が少なくなってしまうのです。

そのような間違った判断を防止すべく、杉山さんは日経POSという外部データを活用して昨年同時期の平均売価をバイヤーに提示しています。

全国の平均売価とお店の売価を比較してもらい、過剰な値下げになっていることに気付かせるのです。

このような客観的なデータを提供することにより、仕入れや値付けの判断がしやすくなったと喜ばれ、バイヤーの厚い信頼を獲得しているのです。

■ミクロデータによる味付け
また、杉山さんは各省庁の統計データやPOSデータだけでなく、ミクロデータも活用して販売予測を提示しています。

ミクロデータとして活用している情報源とは、近隣の競合他社のチラシデータです。

お客さんの近隣の競合店が、昨年の同時期にどのようなチラシを配布していたのかを提示するのです。

例えば、●月の第3週のチラシにレタスを特売して集客していたなどの事実が分かれば、今年も同内容で競合店が集客を図ってくる可能性があります。

その特売を想定して、当社でチラシに掲載すべき商品の提案を行っているのです。

ほとんど営業マンというより、販売促進コンサルというポジションではないでしょうか。

このような質の高い情報を提供してくれるのであれば、バイヤーも大喜びのはずです。
(私がバイヤーだったら大喜びして、絶対に手放さないと思います)

データ情報を活用した販売支援!同業界の方は非常に参考になったのではないでしょうか。

■水田チェック
今回のインタビューはBtoB営業を行っている営業マンには非常に参考になる話であったと思います。

BtoB営業はBtoC営業と違い、お客さんの最終的な目的はすべて「利益」に集約されます。

例えば保険、住宅販売などBtoCの代表的なものを例にあげさせていただくと、保険であればお客さんが求めている目的は「家族の安心」であったり、住宅販売であれば「幸せな空間・時間」であったりなど目的は様々になります。

しかし、BtoBは1次的な目的は色々あるにせよ、最終的な目的はすべて利益につながっているはずです。

要は、企業が購買にあたっての最終的な目的としては、「売上があがるか」「コストが下がるか」なのです。

このような特性がある中、BtoBの営業マンに求められるスキルは、商品の特徴やメリットを話すだけでは物足りず、その商品の「使い方」や、その商品を使った「稼ぎ方」にまで言及できなければなりません。

稼ぎ方までを言及するとなると、当然ですがお客さんの更に先のお客さんのことを把握する必要が出てきます。

しかし、この「更に先のお客さんを理解する」という行為こそが、BtoBの営業・セールスにとって極めて有効かつメリットのあることなのです。

BtoB営業で実績をあげていない営業マンのほとんどは、お客さんの更に先のお客さんがどのようなセグメントのお客さんかを理解していません。

しかし、トップセールスになると多くのケースで、お客さんの更に先のお客さんを理解しています。

あなたの周りの営業マンにこんな質問をしてみてください。

「あなたが担当しているお客さんって、どんな人たちに売っているの?」と。

おそらく、この質問に「明確に答えるか否か」と「成績」には相関関係があるのではないでしょうか。

なぜ、このような相関関係が出てくるのかというと更に先のお客さんをイメージすることにより「自動的に」顧客視点になるからです。

そして更に先のお客さんを理解することで、先のお客さんのセグメンテーションを把握することができ、セグメンテーションを把握することができれば、提案すべき商品が必然と見えるようになるからなのです。

「顧客視点を持て!」とよく叫ばれますが、具体的に何をすれば良いかを言及していない人は多いです。

しかし、そんな中、今回のインタビューはBtoB営業における「顧客視点とは一体何か」を具体的に理解できるきっかけになったのではないでしょうか。

「更に先のお客さんを知る」

非常に具体的で再現性のあるノウハウだと思います。